笑って最期を迎えるために ~1000人の…

笑って最期を迎えるために ~1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力~ <大津秀一著>

話を聴くということが、心を癒すだけでなく、身体の病も癒すことができるとしたら…

著者は緩和ケア医として、終末期や緩和医療の現場に勤務し、これまでに1000人もの患者さんを看取っています。その経験から、患者さんの話を聴く際の「傾聴力」が非常に重要であることを説いています。

ある終末期の患者さんが、医師の適切な傾聴によって心が癒され、穏やかな最期を迎えられた話しなど、実話であるがゆえに圧倒的な説得力があります。

また患者さんの壮絶な心模様と、癒される過程での変化にも注目です。

自分の死期が近づいていることを知りつつも、受け入れられないでいる状態から、少しずつご自身の病を受け入れて行き、最期には「良い人生だった」と思えるまでに至る過程に、傾聴が大きな役割を果たしています。

本著では、話が聴けない人の特徴として、「話が聴けない人ほど、時間が足りないせいにします」としています。傾聴力は、スキル(技術)だけでは通用しません。心も伴っていなければ、十分に「話を聴く」ことができないのです。しかしながら、「心」だけがあっても、「技術」が未熟であれば、真心は伝わりません。

常に「死」と向かい合わせで「傾聴」をしている著者の言葉には、覚悟と凄みがあります。

日常生活ではそこまで「切羽詰った」状態で話を聴くことは少ないかもしれません。

人生は「一期一会」。今日が最後の一日であったら、これが最後の瞬間であったら、と「一緒に過ごす時間を大切」に思いつつ、目の前の相手に向かい合う。

そんな風に過ごすことができたら、よりよい人間関係を構築することができるようになるのではないかと思うのです。

自分も相手も大切にして、ひいては「良い人生だった」と笑って最期を迎えられる。そんな風に生きていけたら良いな、と思っています。

理論だけでなく、実例も豊富で傾聴についてわかりやすく説明されているのですが、患者さんの実例を読みながら、自分自身の人生についても振り返る…そんな機会を得た気がします。(T)

『1000人の患者を看取った医師が実践している 傾聴力』<大津秀一著 大和書房>

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